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雨の日のアイリス

雨の日のアイリス (電撃文庫)雨の日のアイリス (電撃文庫)
(2011/05/10)
著:松山 剛
イラスト:ヒラサト
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総合評価:A´
キャラクター:B
構成:A´
世界観:B
文体:B
内容:A´

 非常に綺麗にまとまった良作だったと思います。

 主人であるアンヴレラ博士に愛され何不自由なく幸せに日常生活を送っていた家庭用ロボットのアイリス・レイン・アンヴレラ。それがスクラップのような姿としてある。彼女が何故そのような姿になってしまったのか。精神回路(マインド・サーキット)から取り出したデータを再構成した彼女が見、聴き、感じ、願ったことを全てである。

 キャラクターは、良いです。ただ、キャラクターの性格を完全に把握しきる前に終わってしまったという印象。登場してくるロボットたちは、非常に「人間らしく」ありながらも、ただの「物」として扱われるという哀しい存在。そこがこの物語の最大のポイントだとは思いますが。また、主人公及び周りの人たちが変わっていく及び変わった様が描写されていたのもポイントが高いと思います。
 主人公アイリス・レイン・アンヴレラは、非常に読者に近い存在として描かれている。最初は何も特徴がないように感じられるが、度重なる哀しく残酷な運命や仲間と呼べるロボットとの出会いにより成長していく。その様が素晴らしいと感じます。また、読了した時、彼女の名前の本当の意味にハッとさせられます。一人称が「僕」であり、あまり女の子らしい言動をしないため、女の子として意識はしませんでしたね。冒頭で説明されているのですが、厳密にはロボットには性別はないと。まぁ、それすらも純粋に物語を読んでほしいという作者の意図かもしれませんが。アイリスの主人であるロボット研究の第一人者のウェンディ・フォウ・アンヴレラは、もっとどんな人だったのか見てみたかったところです。解体工事現場で働くリリス・サンライトとボルコフ・ガロッシュは、元主人に愛されていたロボットと元軍事用ロボットとして生きてきた存在としてかなり象徴的に描かれています。リリスの芯の強さや抱える想い。ボルコフの優しさや想い。両者ともにジーンと心の中に響いてくるキャラクターです。あと、ラルフ・シエル実験助手は、「いい人」ないい人だと思います。

 構成は、奇を衒わない王道。ただただ真っ直ぐに哀しく残酷で、そして最後には温かい気持ちになれる物語です。もっと見てみたかったという思いを抱かせるほどに。全四章の最初、幸せな日常な描写が後半にはかなりのパンチになっていると思います。紙ナプキンを投げつけるなど可愛いですよ。個人的にはもう少しアイリスと博士の幸せな日々を見てみたかったという気はしますが。また、そこに様々な伏線が散りばめられているのも憎いですね。全体的にさり気なく伏線が張られているのも良いと思います。幸せな日々からの転落、解体、転生先での過酷な日々、仲間との出会い、そして脱走。この手のロボットものでは王道的ですが、それ故に泣かせるのだと考えます。特に幸せな日々からの落差が凄まじいので。そして、迎える終章には色々と考えさせられます。

 世界観は、良かったと思います。物語性を重視するため、ロボットの機能についてはそこまで詳しく描写はされていませんが、私としては十分だと思います。ロボットに対する世界の認知度や理解度がどのようになっていたのかは気になりますが。また、舞台装置として、絵本『三流魔神ウェザー・ダーク』を設定して、アイリスたちの置かれている状況をうまく象徴させていたのも良かったと思います。
 しかし、博士を事故とはいえ殺したライトニングに対して、憎いというような感情も抱かなかったのかについては疑問に残りましたかね。また、リリスの脱走計画で最終的な目的地が設定されていなかったもの気になります(例のジャンク屋だとは思っていますが)。

 文体は、淡々としていながらも読みやすい文章であった。淡々と物語していくがゆえにアイリスが置かれた哀しさや解体されていく残酷さがより際立っていると感じます。

 内容は、王道ゆえに感動させられる物語だったと思います。作品全体に「雨」が上手く象徴的に使われてきたのも非常に印象的でした。終章内のセリフ、「雨が……やんでる……」には心が打たれました。また、人は「絶対動かないはずなのに……」といったように、物語において科学や物理法則では説明できない理論を超越した奇跡とも呼ぶものに感動させられるのだと思います。
 物語としては、アイリスに待ち受ける哀しくて残酷な運命。それを乗り越えた先に見えてくるものに心が温かいもので満たされるように思いました。しかし、完全に感情移入しきる前に紙幅が尽きてしまった印象を受けるので、そこが本当に残念だと思いました。

 綺麗な思いで読ませられ、読者に何かを感じさせる。そんな作品であったと思います。
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